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[小説・映画] 蛇にピアス (金原ひとみ) [読書・映画]


蛇にピアス (集英社文庫)

蛇にピアス (集英社文庫)

  • 作者: 金原 ひとみ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2006/06/28
  • メディア: 文庫



蛇にピアス [DVD]

蛇にピアス [DVD]

  • 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
  • メディア: DVD



原作である小説は2003年出版。
作者が20歳のときデビュー作にして芥川賞を受賞したっていうアレです。
全身ピアスとか、刺青とか、ピアス穴を拡張して舌を二つに裂く「スプリットタン」とか、
内容も内容だっただけに結構世間を結構騒がせてましたよね。
作者が私と同い年というインパクトもあり
個人的にはまだ記憶に新しいニュースなのですが、
これがもう6年も前だとは。

映画は2008年公開。
映画化されてたことすら知りませんでしたが、
こちらはわりと最近なんですね。


先ほど書いたように、小説のほうは結構な話題作だったので
当時から興味はありました。
確か、文庫になってすぐくらいに読みましたね。
興味はあっても文庫になるまで手に取らないのがいかにも私らしいですが。。

映画を見たのはつい最近。
絶対映画はグロテスク!見たくない!って思ってたのに、
何だかんだ言いながら最後まで見てしまいました。
でもピアッシングのシーンは目を背けてます。
なんせ私、自他共に認めるビビリ症ですから。
いまだに注射が恐怖です。
耳にピアス開けるときも大騒ぎ。


小説の方は、
あんなに話題になってなければ読んでてもっと面白いと思えたのに、
っていう感じでした。
売り文句の派手さからすごいのを想像するかもしれませんが、
派手なのはシチュエーションだけ、っていう印象。
ピアスや刺青や暴力的な話題は絶えず出てきて
だから過激だと言われればそうなのかもしれませんが、
ストーリーとしては実に淡々とした印象を受けました。

過激なあれこれは単なる素材。
ストーリーの幹は、大人にはハテナマークな渋谷の若者のリアル。
常識ある大人から見たら絶対に正しいとは言えないことばかりで
「それは間違ってる」って言うのは簡単なんだけど、
それを言っちゃあおしまいよ、ってやつで。
大人になったら二度と思い出せないいろんな「無意味」が
熱いんだか冷めてるんだかよくわからない温度でぎゅうぎゅう詰まってる。
そんな感じ。

若いときって、大人になってみるとなんだかよく分からないもんが
すごい重要だったりするんだよね。
振り返るとアホらしいって思うことが多いんだけど、
若かった当時はそうは思ってなくて、結構真剣だったりするわけで。
そういう感覚っていつごろ変わるんだろう。
やっぱり社会に出たときなんだろうか。
色んな「当たり前」をこなさなきゃならなくなって、
それに追われるうちに忘れていくんだろうか。

若いときに持っていた独特の感性が
大人の事情と大人の「当たり前」によって無くなっていくのは
こういう風に書いてみるとツマラナイことのようにも思えるんだけど、
日本みたいな高度文明社会に住みたいんだったら
そういう「当たり前」は絶対に無視できないわけで。
だから「あのときは若かったから」っていうフレーズが生まれたんだろうね。
それで済まされる範囲ならば、いろんな無茶苦茶、いろんな無秩序、
経験してもいいんじゃないかと思う。
どうせ大人になったら忘れちゃうんだから。
大人になったら「下らない」って吐き捨てられるんだから。

だから若いうちに、それを物語としてまとめたのかなぁと。
そんな風に感じた作品でした。

読み終わったあとに何とも言えない後味があって
全然スッキリさせてくれないんだけど、
若者はこうなんだ!みたいな押し付けがましさがないところが
私は良かったと思うし読みやすかった。
でも、作品として言いか悪いかで言うと、それは完全に好みですね。
これは分かれる。
いや分かれるべき。


で、映画はというと、
そんな小説の世界観がそのまま映画となった感じ。
見終わったあとの煮え切らない感じも、淡々とした感じも原作に忠実で、
それでいてうまいこと映画として形になってるなと思いました。
そういう映画って好きなので、私は良かったと思います。
でも、原作を読まずに映画から見るのってどうだろうか・・・。
起承転結のあるドラマを求める人には向かないです。

ワケの分からない世界をちょっと見てみたい。
でももともとワケの分からないものだから、説明されても分からないと思う。
だから映画。だから小説。
自分には理解できなくても、そこに登場する人たちって、
何を考えて、何を拠り所にして生きてるのかなぁと。
それを垣間見るための作品かな。
私はそういう風に感じました。


善悪はともかく、常識とかモラルとかって人によって案外違うもので、
そういうのを覗き見てみたい人にはオススメかなっていう作品です。
私はキライじゃありません。
タグ:書評 映画
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